1.昨年の研究で新たに見い出したアニオン交換体、Ni-Zn複塩基性酢酸塩の組成はNi_<1-x>Zn_<2x>(OH)_2(OCOCH_3)_<2x>nH_2O(0.15<x<0.25)であり、構造は先に報告した銅塩基性塩のボタラッカイト型とは異なり、Zn_5(OH)_8X_2nH_2O型であることを明らかにした。 2.層間の酢酸イオンは種々のアニオンと可逆的に交換可能である。 3.層間アニオンはケイ酸アニオンとも交換することができた。[Si_8O_<20>]^<8->イオンとの直接交換はできなかったが、カプリル酸イオンでまず交換して層間を拡大させたのち、交換を行なうと、[Si_8O_<16>(OH)_4]^<4->イオンとして交換し、これを水熱処理することにより、2:1型層状粘度鉱物に類似の層状ケイ酸塩が得られた。反応はトポ化学的に進行し、ホストの複塩基性塩の組成と構造は保持される。この他、種々のケイ酸アニオンとの交換も可能であることを明らかにした。 4.ボタラッカイトは強アルカリ性溶液中では、水酸化物となり、構造変化するのに対して、Ni-Zn塩基性塩は安定であり、水酸化イオンとも可逆的に交換できる。このイオン交換体は炭酸ガスを吸着し、炭酸イオン交換体に変化した。 5.Ni-Zn複塩基性塩は層間アニオンで隔てられたNi(OH)_2層を含み、アニオン交換により層間隔が自由に変化できるNi(OH)_2二次元磁性体として、物性面でも興味ある化合物である。Ni-Zn複塩基性塩の常磁性温度域での磁化率の温度依存性は、バルクのNi(OH)_2とよく似た挙動をするが、液体He温度の低温では、強磁性的に振舞う事を見い出した。
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