研究概要 |
本研究はイソカルバサイクリンの過去のいずれの合成法にも優る,クライゼン-エン・ルートを基本とする実用的な合成法の確立を目的とする。 平成5年度には(1)ω-側鎖に相当するキラルシントンの大量合成の実験処方の確立、および(2)連続クライゼン・エン反応による立体制御の方法論の開発を行った。 本年度の研究の結果以下のことが明らかになった。 (1)キラルなω-側鎖から調整した銅反応剤を用いてラセミの4-TBSO-シクロペンテノンにマイケル付加反応を行うと、鏡像体区別反応が進行することを見い出した。これによって、光学活性な4-ヒドロキシシクロペンテノンを入手する必要がなくなった。丁度その供給が断たれていた時点であったので、今回の発見の意味は大きい。 (2)イソカルバサイクリンの最初の合成には、カルボン酸等価体としてトリメチルアシルシランを採用した。この特殊な官能基の反応特性について別途検討を続けていたが、今回5-ヘプテノイルシランを低温下(-78℃)で、当量の4塩化チタンと反応させたところ、新しいタイプの環化反応が進行することを見い出した。本反応ではアシル炭素とsp2-炭素の間に炭素-炭素結合を生成して閉環するとともに、残りのsp2-炭素に塩素が結合した生成物が得られた(この反応については平成7年3月日本化学会春季年会で口頭発表)。
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