前年度に合成した4種類の長鎖アルキル基修飾クラウンエーテルを用いた電極表面の修飾法を検討した。本化合物は水面上において良好な単分子膜を形成し、これを電極表面に順次累積してLB膜とすることができた。クラウンエーテル部位が水相中のアルカリ金属イオンを認識し選択的に結合するために、分子の両親媒性が向上したためと考えられる。また、これらの化合物はいずれも分子中にアゾベンゼン基を含有するため、作製したLB膜は光吸収および光応答性(トランス・シス異性化反応)を示すことも明かになった。LB膜の光応答性は分子構造に著しく依存することも確認され、これらの知見をもとに分子構造の改良も実施した。すなわち、光応答性を向上させるために、2本のアルキル基で修飾された両親媒性アゾベンゼンを新たに合成し、これをLB膜として光応答性を検討した。この結果、1本鎖アルキル基化合物に比較して光応答性が向上し、光応答分子認識素子としての有用性が改善された。 一方、チオール修飾シクロデキストリンによる金電極表面の修飾も実施し、修飾金電極の電気化学応答について検討した。ボルタンメトリーによる測定から、チオール修飾シクロデキストリンは電極表面にほぼ単分子状態で固定されており、界面において分子認識機能を保持していることが推定された。分子認識機能を電気化学信号として読み出すことにも一部成功した。 以上のように、本研究は順調に進展しており、今後は(1)分子認識過程の定量的評価、および(2)分子認識素子の改良合成を実施する予定である。
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