前年度合成した、光応答性分子認識素子としての2本鎖側鎖を有する両親媒性アゾベンゼン誘導体による表面修飾方法と表面での機能について詳細な検討を行った。これらのアゾベンゼン類は水面上では良好な単分子膜を形成することができた。この単分子膜を用いて、LB法により固体表面を修飾する方法を検討した。20-25ダインの表面圧でLB膜とすると、表面修飾率(累積比)が0.5-0.7程度となり満足できる表面修飾ができなかった。一方、30ダインの表面圧でLB膜とすると累積比がほぼ1となり、良好な表面修飾が可能であった。また、これらのLB膜は疎水化ガラス表面に強固に結合し、表面修飾物質として好ましい性質を示した。前年度の報告にも一部は述べたが、これらのアゾベンゼン誘導体はLB膜中で、対応する1本鎖側鎖化合物よりも優れた光応答性を示した。これは、2本鎖を有するためにLB膜中でアゾベンゼン近傍に自由空間が存在することに起因するものと考えられる。また、このアゾベンゼン誘導体で電極表面を修飾し、電極反応の光スイッチングの可能性を検討している。さらに、これらの化合物にクラウンエーテルを導入する合成的試みも行っている。 一方、金電極表面を修飾するためのチオール修飾シクロデキストリンの改良合成と表面修飾も検討し、ボルタンメトリー、水晶振動子ミクロバランス、原子間力顕微鏡などの測定を実施した。シクロデキストリンの分子認識(選択的分子包接作用)に伴い、電気化学応答(電流値)が変化することが示された。今後、化学修飾された表面の詳細な構造解析を実施することが必要であると思われる。
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