研究概要 |
高活性HMG-CoA還元酵素阻害剤のうちNK-104を当面の目標分子として定め,昨年度にひきつづき高選択的合成法を検討した。光学活性鍵中間体である(3R,5S)-3,5-イソプロピリデンジオキシ-6-ヘプチン酸t-ブチルは昨年度三つの方法によって合成することができた。なかでも,光学分割法が大量合成に適していることがわかった。この鍵中間体の三重結合に対しヒドロシリル化し,フッ化物イオンを活性化剤としてクロスカップリングさせるに際し,カップリング相手としてヨードベンゼンを用いるとフッ化物イオンの量が1モルでよいことをみつけた。この事実は,トランスメタル化に必要な5配位シリカートを生じさせるには,ケイ素上での置換反応で想定されている5配位シリカートで充分であることを示している。こうしてクロスカップリング法を完成させることができた。 一方,光学活性アルコールのβ,δ-ジケトカルボン酸エステルの不斉還元についても再検討し,水素化ジイソブチルアルミニウムでまずβ-位カルボニルを還元,次いでδ-位カルボニルをシン還元することによりβ,δ-ジヒドロキシカルボン酸を高いeeで得ることに成功した。同光学活性アルコールのアセト酢酸エステルのアルドール反応も検討したが,これは反応点と立体化学制御因子が離れすぎていて,全く選択性がでなかった。 このほか7-オキソ-3,5-イソプロピリデンジオキシヘキサン酸エステルの光学活性体を合成する方法二つを完成させ,これのWarren型オレフィン化反応によってNK-104を合成するルートも完成することができた。
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