研究概要 |
高脂血症や高コレステロール症の治療にはHMG-CoA還元酵素阻害剤が極めて有効であることが示されて以来、天然物のみならずいろいろな合成アナローグが設計され、試されてきた。そのうちNK-104と呼ばれるものは、既存のものよりはるかに高活性で現在臨床試験中である。この研究では、NK-104をはじめとするアナローグ合成の一般的合成法の確立を目的としてスタートした。 (1)β、δ-ジケトエステルの不斉還元法 ナフタレン環をもつ光学活性アルコールのβ、δ-ジケトカルボン酸エステルを合成し、これを水素化ジイソブチルアルミニウムでβ-位カルボニル基を高いジアステレオ選択性で還元した。δ-カルボニル基のシン還元、加水分解、ラクトン化によって目的化合物を光学純度よく得ることに成功した。 (2)オレフィン合成法 上記反応で得た中間体から6-オキソ-3,5-イソプロピリデンジオキシヘキサン酸エステルを得て、これのオレフィン化法を経て目的分子を合成するルートを検討した結果、Warren型反応すなわちホスフィンオキシドのカルボアニオンを用いる方法が収率・選択性に優れていることがわかった。また上記アルデヒドをD-酒石酸ジイソプロピリから合成できるルートを確立した。 (3)ヒドロメタル化・クロスカップリング法 鍵中間体(3R,5S)-3,5-イソプロピリデンジオキシ-6-ヘプチン酸t-ブチルをL-酒石酸シエチルから化学合成する方法、β-ケトエステルのパン酵母による還元を利用する方法、光学分割などによって得たこれのヒドロシリル化、ついでパラジウム触媒を用いるクロスカップリングにより、目的物を立体選択的に得ることができた。クロスカップリングはホウ素化合物によっても達成できることを示した。
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