研究概要 |
光学活性α-オキシ有機スズ化合物の合成とその不斉合成への展開に関する本研究の本年度一年間の成果は以下の通りである。 1.不斉[1,2]Wittig転位の立体化学 光学活性α-オキシ有機スズ化合物から光学活性α-(ベンジルオキシ)スタナンを合成し、これにブチルリチウムを作用させて“カルボアニオン炭素上の絶対立体配置の規定された[1,2]Wittig転位"を行った。その結果、転位はリチウムが結合しているカルボアニオン炭素上での主として立体反転(75%反転)で進行していることを明らかにした。更に、転位基側にも不斉炭素を有する基質の両ジアステレオマ-をα-フェネチルアルコールとα-ヒドロキシ有機スズ化合物から合成し、重複不斉[1,2]Wittig転位を検討した。その結果、(S,S)体の転位よりも高立体選択的(カルボアニオン上で立体反転、転位基上で立体保持)に進行することを見いだした。すなわち[1,2]Wittig転位においてラジカルエナンチオ-間の相互認識が起こることを明らかにした。 2.不斉カルボアニオン環化反応の立体化学 光学活性α-オキシ有機スズ化合物から光学活性α-(ホモアリルオキシ)スタナンを合成し、これにブチルリチウムを作用させて、“カルボアニオン炭素上の絶対立体配置の規定されたカルボアニオン環化反応"を行った。その結果、環化はカルボアニオン炭素上で完璧な立体保持で進行していることを明らかにした。
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