本研究は、有機ケイ素化合物と遷移金属錯体との相互作用によって構築される複合系を有機合成的な立場からデザインし、高選択的な合成に利用することを目的としている。 以下のように、平成5年度の当初計画は多くが所期の目的を達成できた。 1.パラジウム錯体触媒ダブルシリル化 ビスジエン類のパラジウム錯体触媒ダブルシリル化により環状化合物を合成し、ケイ素-炭素結合の過酸化水素酸化を経て、環状ポリオールの立体選択的な新規合成法を開発した。また、立体選択性に及ぼす因子を明らかにした。 2.五配位ヒドロシランの遷移金属触媒反応 立体的にかさだかい五配位ヒドロシランを用いるロジウム触媒脱水素反応により、オレフィンからビニルシランを選択的に合成することが可能となった。四配位ヒドロシランでは不可能な反応であり、反応機構に関しても有用な知見を得た。 3.五配位ポリシランの遷移金属触媒切断反応 五配位トリシラン、ジシランの合成に成功し、遷移金属に対する高い反応性を明らかにすることができた。新しいシリレンの発生法も見いだした。 なお、研究代表者が本年度4月に工学部から化学研究所に転出したばかりであり、残念ながら、まだ研究成果を公表するには至っていない。
|