研究概要 |
初年度は,オキサゾリジン不斉補助基の分子設計・合成とα,β-不飽和アミドに誘導して求核性反応剤との反応を検討したが,本年度は,4(S)-ベンジル-2,2,5,5-テトラメチルオキサゾリジンのプロパンアミドのリチオ化によって発生させたリチウムZ-エノラートと求電子剤との反応における立体選択性を検討した。その結果次の成果を得た。1.種々のハロゲン化アルキルとのアルキル化反応は,95:5以上の高いジアステレオ面選択性で進行した。特に,メトキシアセトアミド誘導体からのZ-エノラートはほぼ完全な選択性を示した。2.このZ-エノラートとα,β-不飽和カルボニル化合物とのMichael付加反応はアンチ選択的で,ほぼ完全なジアステレオ面制御が行われた。しかし,オキサゾリジンのN-不飽和アミドをアクセプターとして用いるリチウムエノラートとのMichael付加反応におけるジアステレオ面選択性は低かった。この結果から,リチウムエノラートのMichael付加反応の反応機構が金属イオンの位置の違いによって異なることを明らかにできた。3.この不斉補助基はN-アルキリデングリシンアミドのリチウムエノラートの不斉アルドール反応にも極めて有効であった。以上の結果から,オキサゾリジン不斉補助基は求核反応剤(α,β-不飽和アミドとして)のみならず求電子反応剤(リチウムエノラートとして)に導入して用いても,高効率的キラリティー制御が行える優れた不性補助基であることが判明した。
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