研究概要 |
2層フレキシブル基材の開発を目的に基材としてポリイソイミドに着目し、その合成条件、性質について検討した。まず、アミド酸を定量的にイソイミドに変換する試薬およびその合成方法の検討を行った結果、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びトリフルオロ酢酸無水物/トリエチルアミン系が適当であることが分かった。次に、イソイミドのイミドへの変換反応を塩基、酸触媒存在下で検討したところ、両触媒共にこの転位反応を促進した。特に、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)が有効であった。更に、各種ポリイソイミドを相当するアミド酸からDCCを用いて合成し、そのガラス転移温度(Tg)を測定したところ、ポリイソイミドとポリイミドとのTgの間に20-70度Cの違いがあることが分かった。これらの知見を基に、プレス温度250度Cでポリマーと銅箔との接着試験を行ったところ、ポリイソイミドでは、剥離強度が780g/cm,一方ポリイミドでは80g/cmと顕著な差が見られた。接着時における銅箔とポリマー界面のモルフォルジー検討するために、剥離後の銅箔とポリマーフィルムの表面をSEMで観察した。ポリイソイミドでは銅箔表面の突起の転写の度合いが高く、さらに剥離時に銅箔の一部が残留したと思われる部分も見られた。そこで、この点を明らかにするためにEDX測定を行ったところ、イソイミドフィルム表面に銅のピークが検出された。これはポリイソイミドがポリイミドに比べてプレスの際の流動特性に優れているためである。以上のように、ポリイソイミドの合成条件、性質を明らかにし、さらには低いTgを利用をポリイソイミドが耐熱性接着剤として有効であることを見いだした。今後、触媒と熱を用いてポリアミド酸溶液から一挙にポリイソイミドに変換できる方法が見いだされれば、現在のポリアミド酸からのポリイミド合成プロセスをそのまま用いることができるので実用化の可能性が高まるであろう。尚、示差走査熱量計(DSC)はポリマーのTgを測定するために使用した。
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