研究概要 |
(1)DHPCの水溶液はボラックスの存在下で熱可逆性ゲルを形成するが、このゲル化がDHPC側鎖末端の1,2-ジオールサイトとホウ酸イオンの2:1錯体を架橋点として進行することを明らかにし、^<11>B-NMR法により架橋点の密度を高分子の分子量と濃度およびホウ酸イオンの濃度の関数として定量することに成功した。また、低分子化合物である1,2-プロパンジオールに関する同種の実験との比較により、DHPCの錯体形成の平衡定数の絶対値が異常に大きい原因がエントロピー因子に由来することを明らかにした。さらに、DHPC系のゾル・ゲル相図が高分子の重なり濃度C^*を用いて一本のマスター曲線に規格化しうることを示し、ゲル化の臨界架橋密度が高分子濃度の関数であること、また、高濃度域ではFlory-Stockmayer理論が近似的に成立することを実証した。 (2)アシル化セロビオース(ACB)は、アシル化セルロースの低分子量モデル化合物とみなしうるが、このn-アルカン溶液が数%以下の低濃度でもかなり強固なゲルを形成することが判明した。光散乱法、FT/IR法、および流体力学的方法などを用いてこの系のゲル化の機構を検討した結果、ACB分子の直鎖状会合体の形成と会合体の局所的な凝集に由来する新しいタイプのゲル(液晶ゲル)であるという示唆を得た。現在、さらに詳しい解析を進めている。
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