研究概要 |
1.ルーピンを燐欠乏培養液で培養した場合,根および葉には7-8種類の酸性フォスファターゼ・アイソザイムが存在したが,その中の1種類のアイソザイムが根から分泌されることを認めた。 2.根から分泌される酸性フォスファターゼは,分子量72,000のポリペプタイド2分子からなるホモダイマーであること,その等電点と至適pHはそれぞれ4.7および4.3であることを明かにした。 3.ルーピン,トマト,アズキを低燐土壌を用いて土耕条件で栽培した場合,根表面の酸性フォスファターゼ活性はルーピンで最も高く,根圏土壌の有機態燐の減少量と燐吸収量も最も多かった。根表面の酸性フォスファターゼ活性は,トマト,アズキでもかなり高かったが,土壌の有機態燐の減少量と燐吸収量はルーピンより劣った。 4.非殺菌条件下での非根圏土壌の酸性フォスファターゼ活性は根表面のそれと比べて著しく低く,土壌の有機態燐の分解による燐供給に対する土壌微生物が分泌する酸性フォスファターゼの寄与度は作物根のそれと比較して小さいと理解された。 5.作物茎葉粉末を脱塩水や1N-硫酸で洗浄して有機態燐の含有割合を上昇させてルーピンを栽培したところ,根圏の酸性フォスファターゼ活性が上昇し,有機態燐を分解・吸収した。 6.ルーピンの根から分泌された酸性フォスファターゼ粗酵素液を,燐無施与条件で低燐耐性の低いビートとトマトの根圏に添加することによって,無添加区と比べて根圏土壌の有機態燐が減少し,燐吸収量が増加し,生育はそれぞれ42および56%改善された。トマトでは酸性フォスファターゼ分泌能がかなり高いにもかかわらず,ルーピンから分泌された本酵素の添加効果が発現したことは,トマトから分泌される酸性フォスファターゼの機能がルーピンのそれより劣ることを示すと推定された。
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