研究概要 |
火山灰土壌の強いリン保持能はリン酸イオンの土壌中の拡散に大きく影響した.速効性の粒状重過石と重過石をポリオレフィン樹脂で被覆した肥効調節型重過石(POC重過石)から溶出したリン酸イオンが約50日間に0,2,4mmの土壌中を拡散した量を比較した.その結果,土壌の厚さ0mmの場合にはPOC重過石からのリンの拡散量は重過石の2-15倍とPOC重過石では重過石より大きく有利であった.しかしながら,火山灰土壌では土壌の厚さが増すににつれて土壌中を拡散する燐酸イオンの量が沖積土より急減した.これらのことから,リン肥料の利用率を上げるためにはPOC重過石を作物根に密に接触させる必要のあることが示された. POC肥料接触区の根系発達は肥料周辺の細根の発達の良いことを除けば,接触施肥の影響をほとんど受けていないかのように伸長,発達した.このことは土壌中の養分や水分も十分利用できる根系発達を維持していることを示している.これに対して,速効性肥料を接触,側条施肥した場合には尿素自身の濃度障害または尿素の加水分解で発生するアンモニアガスの障害により,施肥位置への根の伸長が妨げられ,特にリンの吸収が阻害された.これは火山灰土壌の強いリン保持能のためにリン酸イオンが土壌中を拡散しにくく,根が施肥位置に達しないとリンを吸収できないためである.
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