研究概要 |
火山灰土壌は窒素,カリなどの非特異吸着イオンとして挙動する肥料成分の保持力が弱く,これらの損失が大きい,その一方,リンの固定力が大きく,リンの不可給態化が著しい.このため,火山灰土壌での農業は極端な多肥農業でかつ肥料利用率の低い農業となってきた.このような多肥農業は陸水,内湾の富栄養化防止のためにも是正していく必要がある.このためには近年開発されたポリオレフイン被覆(POC)による肥効調節肥料の応用が有効で,この肥料を全量基肥で種子と接触施与(接触施肥)することにより,施肥作業の大幅省力化が期待できる. 接触施肥で最も問題となるのは根が濃度障害を受けないかどうかという問題である.デントコーンでは,根箱,圃場試験ともPOC肥料を用いることにより出芽率は100%に近く全く問題はなかった.また,根系の発達経過をみると肥料周辺に根が偏り,土壌養分や水分の吸収に問題の起こすようなことはなかった.そして,全量基肥接触施与で速効性肥料を慣行施与した場合とほぼ同様の収量が得られた。このPOC肥料からの肥料成分の溶出は湿潤条件では土壌温度だけに依存し,降雨の多少の影響はほとんど受けず,安定な肥効を発現した.このPOC肥料を全量基肥接触施与する技術は水稲の不耕起直播栽培でも速効性肥料に比べて有効であった.また,POCリンを接触施与することにより,リン肥料の利用率を向上できる可能性が示された.
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