複製開始直前のoriC複合体〔pre-initiation(oriC)複合体と呼ぶ〕の形成にかかわる要因の検討を行った。まず、DNA gyraseの阻害剤の複合体形成に対する効果を調べた。novobiocin処理により、pre-initiation複合体の形成が強く阻害され、引き続く複製開始も阻害された。一方、nalidixic acid処理では、複合体の形成も複製開始も進行した。この時、reporter plasmidの超ラセン度をクロロキンゲル電気泳動により調べたところ、novobiocin処理により、顕著な超ラセン度の減少が見られた。nalidixic acid処理では、それ程変化しなかった。これらの結果からpre-initiation oriC複合体の形成にはDNAの超ラセン構造が必要であることが示唆された。 oriC複合体画分中にヒストン様蛋白質H-NSが見い出されたため、H-NSの染色体複製における役割を検討した。in vitroのoriCプラスミド複製系においてH-NSは阻害効果を示した。少量のHUによりoriCからの複製開始が増加することが知られているが、H-NSはこれを代替しなかった。 大腸菌の細胞周期におけるカルシウムの役割を明らかにするために、培地中の高濃度のカルシウムによって生育が阻害される変異株と、高温感受性が抑制される株を探索した。fcsA29変異株として分離されていたCS2-29株がカルシウムによって細胞分裂が阻害され、巨大細胞を形成して死に至ることを見い出した。カルシウム感受性はfcsA29変異とは異なる変異によるものであった。また新たに、高温感受性がカルシウムによって抑制されるts88変異株を分離した。現在、これらの遺伝子のクローニングを行っている。
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