研究概要 |
穀物等の果実生産につながる花成誘導機構の解明は人類にとっての重要な研究課題である。本研究者らは、自ら合成したある種のカーバメート化合物が、播種後わずか一ヶ月のアスパラガスの芽生えに花芽を誘導することを見いだした。この化合物は、内生的にはp-クマル酸合成酵素を阻害することから、その作用点は小胞体P-450にあると考えられた。一方、さらに植物に花成を誘導する化合物を探索した結果、ポリアミン誘導体がアサガオ(品種キダチ)の芽生えに花芽を誘導することを見いだした。本研究では、これらの植物における花成誘導機構の解明に向けて、新規かつ高活性の花成誘導物質を開発するとともに、その作用性と作用機構を明らかにすることを目指した。 1.アスパラガスにおける新規花成誘導物質:P-450との相互作用が反応性のものなのか、あるいは非共有結合性のものなのかを調べるため、反応性官能基であるメチレンジオキシ基をもった種々の化合物を合成した。そして3,4-位にメチレンジオキシを持つカーバメートにこれまでにない強い活性を見いだした。 2.アサガオにおける新規花成誘導物質の開発:これまでにputrescineがアサガオに花成を誘導することを見いだしていたが、今回さらに種々のアミン類を探索した結果、生原ポリアミンのcadaverineおよび非生原の1,6-diaminohexaneに強い活性を見いだした。とくに1,6-diaminohexaneは非天然の化合物であり、花成誘導の作用点を探る対象としてきわめて有用であると考えられる。 3.アサガオ花成誘導物質による内生ポリアミンの変動:各種花成誘導アミンの施用が、それによる花成誘導と同調して内生のputrescineレベルを著しく上昇させることを見いだした。これれはputrescineが花成誘導の引金として働いている可能性を示唆するものであり、次年度以降の研究の展開に大きな道を開いたものと言える。
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