本研究は、数十気圧の二酸化炭素ガスあるいは超臨界二酸化炭素を用いた非加熱殺菌法に関するものであり、パン酵母と殺菌胞子を殺菌対象菌として殺菌効果に対するガスの種類、加圧温度、圧力、接触時間、減圧速度および水分の影響を調べると共に、殺菌の機構について考察を行った。平成5年度においては水分含量60%以上の湿潤パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の場合、40℃、40気圧、3時間の処理により生菌率を10^<-8>まで低下させることが出来ること、Bacillus meaterium QMB 1551の胞子の場合は60℃、70気圧、24時間の処理により生菌率を4×10^<-4>まで減少させることが出来ることを明らかにした。本法の殺菌機構には微生物細胞に対する加圧時のガスの収着および減圧時の脱着が関係していることが予測され、減圧時の脱着ガスによる機械的破壊効果のみではなく、加圧時の溶解ガスの影響も考えられた。平成6年度においては、CO_2、N_2O、N_2およびArの4種類のガスの殺菌効果を検討したところ、パン酵母についてはCO_2の他、CO_2ほどではないがN_2Oも有効であることが明きらかになった。しかし胞子の場合にはCO_2のみが有効であった。胞子の殺菌においてCO_2の臨界圧より少し低い所に最適な圧力があることを予想させる結果を昨年得たが、実験データの追加によりこのことを再確認した。しかし圧力の最適値の存在理由は不明である。また本処理によりパン酵母から抽出されるタンパク質量は約20%増加したが、胞子の場合は変化がないことも明きらかになった。
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