研究概要 |
プロテアーゼ阻害物質のスクリーニングにおいて強いトリプシン阻害活性を示した淡水産藍藻Microcystis aeruginosa(NIES-98)より得られた阻害物質、および特異な構造を有する化合物の単離・構造決定を行い、活性の評価を行った。 国立環境研究所より分譲を受けたMicrocystis aeruginosa(NIES-98)をMA培地を用いて大量培養した。培養液より得られた凍結乾燥藻体を80%メタノールで抽出し、溶媒分画、各種クロマトグラフィーを用い精製し、トリプシン阻害物質aeruginosin98-A(1)、B(2)、C(3)を得ることができた。また、特異な構造を有する化合物aeruginoguanidine98-A(4)、B(5)、C(6)を得ることができた。 1の分子式はHRFABMSによりC_<29>H_<45>N_6O_9CISと決定し、アミノ酸分析および2DNMRスペクトルにより、allo-Ile、3-chloro-4-hydroxyphenyllactic acid(Hpla)、agmatin、2-carboxy-6-hydroxyoctahydroindole sulfate(Choi sulfate)の存在が確認された。配列順序は、HMBCスペクトルにより推定し、平面構造を1と決定することができた。2と3の構造は1の塩素が水素と臭素に置換していると推定した。1、2、3のトリプシン阻害活性はIC_<50>=0.6、0.6、3.9μg/mLであった。 5の分子式はHRFABMSによりC_<34>H_<59>N_9O_<14>S_3と決定し、2DNMRスペクトルにより、1-(4-hydroxy-3-hydroxymethyl)phenyl-1-hydroxy-2-propylamine 4′,3′,1-tri-O sulfate(Hphpa trisulfate)、N-MeArg、N^α-methyl-N^ω-geranylarginine(NmgArg)の存在が確認された。配列順序は、HMBCおよびNOESYスペクトルにより推定し、平面構造を5と決定することができた。4と6の構造は1のN-MeArgの側鎖が異なっていると考えられた。4-6の化合物は、マウス白血病細胞P388に対して弱い細胞毒性を示した。
|