研究概要 |
乳酸菌が衆病皆除の作用に優れているとする歴史的経験則から乳酸菌のヒト健康維持に対する様々な研究が進められており,本研究もそこに目的を置いている。消化器系の発癌に大きく関与する化合物の筆頭に挙げられているN-ニトロソ化合物群をいかに忌避するかが発癌頻度を低下させる上で極めて大きな意味をもっており,N-ニトロソ化合物の示す強い発癌性に対して強い消去作用を有している乳酸菌を見い出すことが本研究の目的である。そこで筆者らは世界の各地から集めた伝統的発酵乳より乳酸菌を分離する作業から開始し,約200株に及ぶ乳酸菌を分離して,それら全株について同定を終了した。これらの株のうちモンゴル原産のケフィアやインドネシア原産のダディヒから分離したLeuconostocやLactococcusに属する数十株が揮発性の各種N-ニトロソアミン化合物に対して顕著な抗変異原性を有していることを認めた。 なお,揮発性の各種N-ニトロソ化合物に対して顕著な抗変異原性をもつそれら乳酸菌はアミノ酸加熱分解物に対しても強い抗変異原性を有しており,広い抗変異原性スペクトルを有していることを認めた。次年度ではこの点をも含めて詳細な検討を行う予定である。
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