1.ロジウム(II)トリフェニルアセタート錯体(Rh_2(OCCPh_3)_4)はRh_2(OAc)_4等の既存のロジウム(II)錯体では実現できない選択性を示す。本錯体が示すメチレンC-H挿入への極めて高い選択性は、従来極めて困難な課題とされてきたビシクロ[3.3.0]オクタン及びビシクロ[4.3.0]ノナン骨格の位置及び立体選択的構築を可能にした。架橋配位子トリフェニルアセタートの嵩高さが選択性発現の要因と考えられる。また、本錯体は芳香環C-H挿入への極めて高い選択性を示し、各種2-インダノン誘導体の効果的合成法を提供した。 2.ロジウム(II)N-フタロイル-(S)-フェニルアラニナ-ト錯体を触媒とするα-ジアゾ-β-ケトエステルの分子内不斉C-H挿入反応は、最高不斉収率80%eeでR配置の3位置換シクロペンタノン誘導体を与えた。なお、本反応のエチンチオ選択性は、架橋配位子の構造のみならずエステル部の立体的及び挿入部位置換基の電子的影響を強く受けることが判明している。また、本錯体を触媒とする芳香環C-H挿入反応を経るエナンチオトピックな二つのベンゼン環の識別を機軸とし、第四級不斉炭素をもつ(S)-1-エチル-1-フェニル-2-インダノン誘導体が最高不斉収率95%で得られた。 3.ロジウム(II)N-フタロイル-(S)-アラニナ-ト錯体を用いるα-ジアゾアセトアミド誘導体の分子内C-H挿入反応によりカルバペネム合成の重要中間体2-アゼチジノンが最高不斉収率96%で得られることが判明した。
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