我々は、過去数年に亘るこの領域での研究実績を基盤として、新規微小管機能制御物質を微生物資源より探索し、作用機作を分子レベルで解析するとともに、天然物を"lead"とした分子設計による新規活性化合物の創製、さらに、この結果より得た知見を基にして、薬剤-チューブリン間の分子認識機構の解析をしてきた。 本研究では、稲こうじより単離し、強いチューブリン重合阻害活性を持つウスチロキシンAのチューブリン上の結合部位が、リゾキシン/メイタンシン部位に一致することを明らかにした。さらに、稲こうじより類縁体の検索を行って、ウスチロキシンB-Dを単離・構造決定し、これらが、同様に強いチューブリン重合阻害活性を示すことも確認した。 リゾキシン/メイタンシン部位に結合するフォモプシンとウスチロキシンは共通の13員環状構造を持ち、この部分構造がチューブリンとの相互分子認識で重要と考えられるため、この部分構造を構築し必要構造要素を明らかにすべく合成法を開発中である。一方、コルヒチン部位に結合するコンブレタスタチンA_4をリードとするアザ類縁体を設計・合成したが、その中でトリメトキシベンジルアニリン系化合物に高い抗チューブリン活性および細胞毒性が認められた。現在、これら化合物の抗腫瘍活性を検討すると共に、コルヒチン部位の解明および微量チューブリンの精製に資するべく、チューブリンに活性なN-置換ベンジルアニリン誘導体の置換基として光アフィニテイー標識用官能基およびアフィニティークロマト用官能基の導入を試みている。
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