研究概要 |
我々は過去数年に亘るこの領域での研究実績を基盤として、新規微小管機能制御物質を微生物資源より探索し、作用機能を分子レベルで解析するとともに、天然物をリ-ドとした分子設計による新規活性物質の創製、さらに、この結果より得た知見を基盤として薬剤-チューブリン間の分子認識機構を解析してきた 本年度は、リゾキシン/メイタンシン部位リガンド'ウスチロキシン'についての分子認識機構の解析を目指し、化学変換、化学合成研究を計画した。まず、フォモプシンAを含むこれら13員環ペプチド抗生物質中で最小のウスチロキシンDは、最小活性構造の解明を目的とする対象として最適な化合物であるので、これの供給のため、最も収量の多いAからの変換を試み、酢酸中PtO_2触媒存在下の還元により約50%の収率で得た。この還元反応ではベンジル位水酸基の脱離や芳香環の飽和した成績体も得られており、これらの反応を利用した構造/活性相関も検討中である。また、13員環ペプチド構造の各種ヴァリエーションを可能にするため、全合成法開発に着手し、最も単純なアミドエーテル13員環の構築に成功した。 一方、強い細胞毒性を示す化合物として海洋らん藻から単離されたキュラシンA(J.Org.Chem.,59,1243(1994))は、4ヵ所の不斉を持つ比較的単純な構造の、全く新規なタイプの有糸分裂阻害剤である。そこで、未決定な立体構造の確定と作用機構解明および生理活性類縁体の開発を目指して全合成を企画し、3ヵ所の不斉を含む部分構造の立体異性体を4種(2ヵ所の相対配置は決定されている)を合成した。NMRおよび旋光度から天然物の立体配置を限定し全合成への指針とするとともに、これらの活性の検定を行っている。
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