1.オピオイド受容体のリガンド結合部位の近傍に、チオール基が存在することが示唆されており、コンピュータを用いて作成した受容体の三次元モデルより、このチオール基はμ-、δ-、κ-オピオイド受容体の第7膜貫通部位に共通に存在するシステイン残基由来のものであることを推定した。そこで、このチオール基を直接捕捉するために、モルヒネ分子のC-6位または、C-8位に、活性化チオール基を導入した非可逆結合型リガンドを合成し、これらを用いてラット脳膜に存在するオピオイド受容体のアフィニティーラベリングを行った。その結果、活性化チオール基を導入する部位の違いにより、ラベルされるレセプター数に10倍以上の差を生じることが判明し、リガンド結合部位やレセプターとの結合様式を推定する上で有用な知見が得られた。 κ-オピオイド受容体に対する親和性及びμ-、δ-オピオイド受容体拮抗生を有するリガンドとしてモルヒネ分子のベンジル位に酸素原子を導入したリガンドの簡便な合成法を検討した。その結果、モルヒネ分子のベンジル位の効率的な酸化法を見いだし、効率良い大量合成法を確立することができた。現在、このリガンドの薬理試験を行っている。
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