1 μ、δ、κの各オピオイド受容体のアミノ酸1次配列の相同性を検討し、受容体分子の3次元モデルを作製し、またリガンド結合部位にシステイン残基が存在することに着目して受容体分子のモデルを比較し、さらにリガンドドッキング実験を行い低分子オピオイドリガンド結合部位を推定した。その結果、受容体分子の3次元モデルにおける特定のアミノ酸残基とリガンド分子との相互作用に注目し、その性質を考慮した設計を行うことで、効率のよいガンドデザインを行える可能性が示唆された。 2 非可逆結合型リガンドを設計し、μオピオイド受容体の結合部異に存在するチオール基を直接捕捉するアフィニティーラベリング実験を行った。その結果、ラベルされるチオール基は、リガンドが受容体に結合する際、その6β置換基に非常に近い位置に存在することが証明されたため、推定したオピオイド受容体のリガンド認識部位が支持された。さらに、受容体の3次元モデルにおけるリガンドドッキング実験を行った結果、μオピオイド受容体におけるアゴニスト、アンタゴニストの結合様式の推定を行うことができた。 3 上述の結果を活かして非麻薬性鎮痛薬の設計を試み、κアゴニスト性を強める目的で、ベンジル位にケトン基を導入したリガンドを設計した。リガンドドッキング実験を行った結果、リガンドのベンジル位に新しく導入したケトン基は、κ受容体に特徴的なGlu297と相互作用が可能であることから、このグルタミン酸残基とリガンド分子のケトン基の相互作用により、κアゴニストサイトへの選択性が強められる可能性が示唆された。このリガンドを用いて、GPIを用いたin vitroにおける鎮痛活性試験を行ったところ、μアンタゴニストーκアゴニスト混合薬であること、また、κオピオイド受容体を介する強い鎮痛活性を有することが示された。
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