水産物は一年のうちで最もおいしい時期いわゆる旬のあることが知られている。一般に「水産物に脂がのっている」といわれ、脂質含量の多い時期といわれている。しかし、脂質含量の少ない貝類にも旬があることから、脂質以外の呈味成分さらにテクスチャーの影響も考えられる。また、近年、生産量の増大している養殖魚については、天然魚に比べ脂質含量の多いことが、嗜好性の劣る原因の1つとされている。しかし、養殖魚にも天然魚と同様に季節変化があるかどうかは充分調べられていない。そこで、クロアワビとハマチ、マダイ、ヒラメをとりあげ、成分の季節変動を検討した。 先ず、クロアワビについて、呈味成分の分析と、物性測定を行った。試料は神奈川県水産試験場において一定飼料で少なくとも2ヶ月間飼育したものを、2、4、6、7、8、10、11、12月に3個体ずつ、活きたまま実験室に運び、直ちに分析を行った。殻つき重量は300〜450gであった。水分量は旬といわれる6〜8月に最も少なく、産卵期である11〜2月に多くなり、タンパク質量、炭水化物量とは逆の関係にあった。脂質は0.3〜0.8%であった。ATPおよびATP関連化合物の総量は6〜8月に多く、11月には最低となった。遊離アミノ酸の総量の変化も同様であった。物性測定の結果、保水性は6〜8月に高く、破断強度は6〜8月に小さく、夏にはジューシ-で軟らかいテクスチャーとなることが確かめられた。以上のように、クロアワビは旬といわれる夏にはうま味成分であるAMPや遊離アミノ酸量も多く、テクスチャーも軟らかいことが確かめられた。 ハマチ、マダイ、ヒラメの一般成分およびテクスチャー特性の季節変化は天然魚と養殖魚についてほぼ同様であると思われる。
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