研究概要 |
ポリエチレンテレフタレート[PET:フィルム(厚さ75mum),フィラメント糸(5.3d)]を高温高圧染色機カラーペット12(ニッセン)で130℃,2atmで染色した。染料:最初にアントラキノン系染料について実験したので次のような水酸基の数と位置の異なる化合物を染料並びにそのモデル物質として用いた。【.encircled1.】キナリザリン、【.encircled2.】アリザリン、【.encircled3.】1,5-ジ-ハイドロキシアントラキノン、【.encircled4.】1-ハイドロキシアントラキノン、【.encircled5.】アントラキノン、【.encircled6.】アントラセン。染色条件:フィルム(浴比1:50,染料濃度10%o.w.f.,染色時間2時間)。フィラメント系(浴比1:75,染料濃度10%o.w.f.,染色時間1時間)。染色試料についてオートグラフで引張試験をした結果、特に1,5-じ-ハイドロキシアントラキノンのようにアントラキノン分子構造の両端に離れて水酸基を持つ染料では、フィルムもフィラメント糸もともにオフセット降伏点の上昇が見られた。この結果は水酸基とPET分子との間に相互作用(染料の両端で2か所に水素結合ができる)が働き、架橋結合に準じた構造が多数生成したことを示唆するものである。 染料/PET間の水素結合生成を確認するため、PETのモデル化合物としてジメチルテレフタレート(DMT)を用い、1,1,2,2-テトラクロロエタンを溶媒として、染料溶液と染料/DMT混合溶液につき、溶液セル法でFTIR測定し、3600cm^<-1>付近の染料水酸基の吸収強度と振動数移動を調べた。DMTを加えると吸収ピークが低下し、低振動数側に染料/DMTとの水素結合形成による新しいピークが出現した。 高温高圧染色したPETの分子構造を解析するため、X線回析法により結晶性の変化を調べた(実験継続中)。
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