研究概要 |
固体電解質燃料電池(SOFC)の研究開発において最も重要なことは、固体電解質および酸化物カソードの薄膜化および積層技術である.さらに基板との密着性や熱膨張の整合およびガスシールなどの問題解決も重要である.本研究者らは,従来より電子ビーム蒸着法により,緻密でかつ強靭な部分安定化ジルコニア薄膜の作製法を開発してきた. 本研究では,これらの現在までの蓄積した技術に立脚して,新たにセルの積層化技術を開発し,燃料電池を構成することを第一の目的とする,すなわち,機械的強度,温度分布,熱膨張,ガスシールなど極薄型セルの積層化に対する基本的問題について充分に検討し電池設計を進める.以下に研究成果を記す. 1)熱応力緩和機能を有するジルコニア薄膜 電子ビーム蒸着法により波型にプレス成形したニッケル箔上にジルコニア薄膜も作製することによって,箔の形状を精密にレプリカした,襞構造を持つ極薄型ジルコニアセルを考案した.このセルは熱膨張により発生するひずみの自己緩和機能をもつためセルの大型化を可能にする大きな特徴を持つ. 2)空気極集電法の開発 コイル状に加工した耐熱、耐酸化性合金線(インコネル)の頂点を空気極内(ランタンマンガナイト)に焼き付けることにより、電気的接触抵抗が少なく,かつ集電部がフレキシブルなため積層時に応力が緩和され安定な集電を可能にした新しい集電法を開発した. 本研究は当初の目的,計画にそってほぼ順調に達成しつつある.しかし,電子ビーム蒸着法で作製したジルコニア薄膜セルの発電特性が現時点で目標に達していない.原因について現在究明している.
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