研究概要 |
河川への負荷が増大する降雨流出時における農業系物質の挙動を明らかにする必要がある.本研究は高原野菜が集約的に栽培され,水系の汚染が懸念されている長野県菅平において,降雨流出時に農業系物質がどのようなプロセスで水系へ流出するかを検討した.また,農薬については簡易分析法を含め,土壌および底泥などでの生分解特性なども検討した. 6回の降雨時に菅平盆地の流出口と上流地点で,水位(流量),硝酸イオンを含む一般水質,水温,濁度電気伝導度,pH,農薬として土壌殺菌剤PCNBをほぼ1時間間隔で測定した.また,地下水,湧水,河川水,農業用暗渠排水なども分析した.これらの分析結果とこれまでの観測結果を会わせ,次のような知見を得た. 1.農地の地下水の水質は,その立地条件により,すなわち山腹,湿地周辺,旧湿地内の農地により特異な組成を示し,特に硝酸イオンと硫酸イオンの濃度に特徴的に現れる. 2.降雨流出時の物質の濃度変化パターンは主に4つのタイプに分類でき,それぞれ流出経路,供給源を反映したものと考えられた. 3.降雨時は,上流から下流まで水質の組成の差が少なくなり,全体として汚染されている農地の水質組成を示すようになる.また,水質組成の変動からみると,降雨時にもたらされる物質は旧湿地あるいは周辺の農地から由来する可能性が高いことが示唆された. 4.事例は少ないが,農薬(PCNB)は一般水質と異なる変動,すなわち流量の増加時に,高濃度になる傾向を示し,農薬が表面流出によりもたらされることが示唆された. 5.土壌中のPCNBの簡易分析定量法を開発した.
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