研究概要 |
微生物二次代謝酵素を糖質変換・糖鎖合成に活用する基礎研究として、アミノ配糖体抗生物質生合成で機能する炭素環形成酵素(2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素)及びアミノ糖転移酵素について反応機構の精密解析、酵素蛋白質の構造解析等を行うため、二重標識プローブの合成とそれによる反応解析、酵素調整法の改良、酵素遺伝子探索用のライブラリーの確立を行った。 2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)合成酵素の調製について、これまでのStreptomycesfradiae細胞の超音波破砕による方法から細胞壁溶解酵素による方法へとその効率化を図った。 DOI合成酵素の反応機構をさらに厳密に検証するため、二重標識体[4-^2H,3-^<18>O]グルコース-6-リン酸の化学合成法を初めて開発した。これを基質として部分精製酵素により酵素反応を行ってその生成物を質量分析で解析し、非標識グルコース-6-リン酸との共存下においても二重標識体由来の生成物は二重標識体を維持しており、NADに移転する基質4位水素は元の分子由来の炭素六員環生成物分子に復帰することを示した。酵素分子はNADと強く結合しており、反応の間基質分子が活性中心から離脱すること無しに、脱水素、脱リン酸、還元、アルドール縮合の多段階反応が整然と進行していることを初めて明らかにした。 2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素活性が検出できたBacillus circulansから、常法によりフェノール抽出したゲノムDNAを用い、EcoRI及びHindIIIにて切断してE.coliプラスミドpUC19へと挿入し、E.coliJM103の形質転換により、約2000個からなるB-circulansのゲノムDNAライブラリーを作製した。既に確立してあるHPLCによる分析法を用いて、この中から2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素活性を持つもののスクリーニングを開始している。
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