研究概要 |
微生物二次代謝酵素を糖質変換に活用する基礎研究として、本年度は光合成産物であるグルコース-6ーリン酸を直接炭素六員環に変換する2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)合成酵素に焦点を絞り、その精製と反応機構の解析、並びに酵素遺伝子の探索を中心に研究を進めた。Streptomyces fradiae及びBacillus circulansのDOI合成酵素の精製を検討した。St. fradiaeの酵素は不安定で-80℃に保存しても経時的に失活する。一方B. circulansのDOI合成酵素は、DEAE-セルロファインによるイオン交換及びQ-セファローズクロマトグラフィを経て得た標品は長時間の冷凍保存に耐える。B. circulansの酵素はSt. fradiaeの酵素とやや性質は異にするが、いずれもCo^<++>により活性が亢進する。本酵素は色素リガンドのアフィニティクロマトグラフィが有効であり、ゲル濾過およびMono-Qによるクロマトグラフィでさらに精製を進め、蛋白質を8種類程度に限定出来、分子量は約3万から6万程度と推定した。 [4-^2,3-^<18>O]グルコース-6ーリン酸により反応機構を追跡し、基質4位の水素は酵素内で一度NADに転移するが、反応過程で再度同一炭素に復帰して炭素六員環生成物中に残存することがわかった。この反応の同位体効果k_H/k_Dは2.8であった。本酵素が補酵素NADと強く結合することは明らかである。 昨年度構築したB. ciculansゲノムDNAライブラリーから、生成物である2-デオキシ-scylrlo-イノソースを誘導体化後検出する方法でDOI合成酵素活性についてスクリーニングした。現在までのところ1000株ほどを供試し、1株に可能性を認めたが、再現性に乏しく活性は確認出来ていない。引き続き遺伝子探索を継続している。
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