等質は細胞内外の情報伝達に関わるなどさまざまな機能を有し、生理活性物質の素材として重要である。新規有用な物質を創製するためさらに新しい糖質変換・糖鎖合成の方法論が開拓される必要がある。多種多彩な生理活性物質を産する微生物二次代謝には各種の化学反応が含まれ、有効な活用が待たれている。本研究は、アミノ配糖体抗生物質の生合成系にある酵素群を有用な糖質変換・糖鎖合成酵素群と捉え、酵素の探索と反応機構について検討した。糖鎖合成酵素の探索は、基本構成単位パロマミンの生成酵素を対象に、活性検出法の検討と予想前駆体の合成を行ない、抗生物質生産菌5種から無細胞系を調製して行なった。現在までのところ、再現性よく反応系を確立するに到っていない。糖質変換反応としては特異な炭素環化合物2-デオキシストレプタミンに注目し、D-グルコースからの環化酵素を検討した。先ずHPLCによる反応追跡法を確立し、Streptomyces fradiae及びBacillus circulansに酵素活性を認めた。前者の酵素は不安定であったが、後者の酵素は低温保存に安定であった。精製を進め、数種の蛋白質に限定すると共に40Kd-60Kdの分子量を推定した。機能はいずれの酵素もグルコース-6ーリン酸を基質とし、NAD^+の存在下(1)基質4位の酸化、(2)脱リン酸化、(3)4位の還元、(4)アルドール縮合、から成る多段階を触媒することを明らかにし、ス-デオキシ-scylls-イノソース合成酵素と呼ぶべき単一酵素であることを示した。B.circulansゲノムDNAの部分消化とE.coliプラスミドへのクローニングによりライブラリーを構築し、組み換え体細胞の酵素活性を調べることで酵素遺伝子の探索を続けている。さらに本酵素反応に化学的に等価な反応であるFerrier反応について検討し、ラジカル中間体が関与する反応機構を提案することができた。
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