研究概要 |
本研究は、一本鎖DNA固定化した水晶発振子を用いて水溶液中でのターゲットDNAとの塩基対形成(Hybridaization)を振動数の経時変化から、定量的に評価することを目的として行われ、以下のような成果が得られた。 1)M13phageDNA(7250量体)のEcoRI認識部位(dGGGAATTCGT)と相補的な塩基配列をもち、5'位末端にSH基を導入したオリゴヌクレオチド(dCCCTTAAGCA)を合成し、9MHz,AT-cutの水晶発振子の金電極上にSH-金基板との相互作用を利用して固定化した。 2)オリゴヌクレオチド(プローブ)固定化発振子を水溶液中に入れ、ターゲットDNAとして、塩基配列の異なるオリゴヌクレオチド(10量体)を水溶液中に加えた時の振動数変化から発振子上でのハイブリダイゼーション量をngレベルで定量することができた。また、振動数の経時的変化から二本鎖形成の過程や解離の動力学を求めたところ,温度を上昇したり,塩橋度を上昇させると結合定数が低下した。これは,結合速度が変化したのではなく,解離速度が大きくなったために結果として結合定数が減少することが明らかとなった。 3)さまざまな塩基配列を持つターゲットのオリゴヌクレオチドを合成し、ハイブリダイゼーション量、二本鎖形成速度、解離速度などを求め、二本鎖形成のために必要な塩基配列などを検討した。その結果,塩基配列の中央付近にミスマッチを導入すると結合定数が大きく低下し,これは解離速度が上昇するためであることがわかった。
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