研究概要 |
1.プロクターゼAの機能残基の検索を進め,ヒスチジン,リシン,トリプトファン等の残基の化学修飾から,これらの残基は活性発現に直接関与しないことを確認した。また,カルボキシル基については,前回未検討の全主要カルボキシル基を部位指定突然変異導入法によりAsp→Asn,Glu→Glnに変換した誘導体を大腸菌で発現し,精製標品を得た。これらについて活性発現の有無を検索中であり、おそらく触媒基は重鎖のAsp-14と、現在検討中のカルボキシル基中の特定の1個と推定される。 2.プロクターゼB前駆体について,部位指定突然変異導入法により,N末端プロペプチドの塩基性アミノ酸を他残基に変換する試みを継続した。この結果、N末端側の5残基をGlnに変換しても,活性化には影響しないことが判明した。この結果は,プロペプチドの全体的な塩基性は活性化にそれほど重要な要因とはならないことを示している。 3.プロクターゼAの異種核置換多次元NMRによる解析を進めるために、^<14>Nおよび^<13>C置換酵素の調製法を種々検討し,^<14>N(または^<13>C)標識クロレラを用いたAspergillus riger(クロコウジカビ)の培養による標識酵素の調製法を確立した。また,これらの標識酵素を用いて多次元NMRによる立体構造の解析を進めた。 4.プロクターゼAの基質特異性を,酸化インシュリンB鎖,酸化リボヌクレアーゼA,種々の生理活性性ペプチド等を基質としてHPLC法により検索し.Asn-X結合に最もよく作用し,Tyr-X,phe-X,Gln-X結合にもかなりよく作用すること,また若干のその他の結合にも弱く作用することを明らかにし,プロクターゼAがユニークな特異性を持つことを示した。また,N-アセチル-レ-フェニルアラニルーレージヨードチロシンが阻害作用を持つことを示すとともに,酵素との相互作用をNMRにより解析し,結合により本インヒビターが特定のコンホメーションをとることを示した。分子内NOE測定からそのコンホメーション解析を行った。 5.プロクターゼAとその2種の重金属(Pt,Hg)置換体の結晶について巨大ワイセンベルグカメラによる解析像の収集を完了し,構造計算を進めた。 6.プロテアーゼの基本的性状に関する基礎的研究を進めた。
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