酵素が示す特異的反応性は、反応中心における触媒活性に加えて、そとりまく蛋白質の合目的的な構造変化が重要である。未反応の基質を取り込み、生成放出するメカニズムがあって初めて酵素は繰り返し反応できる。その役割を担うのが質部分であり、それはかなり速いコンフォメーション変化を含む。本研究では呼吸系いて酵素を水に変える酵素であるチトクロム酸化酵素と、酸素貯蔵タンパクであるミロビンの反応中間体を時間分解共鳴ラマン分光法で追跡した。ウシ心筋チトクロム酸素と一酸化炭素との複合体をレーザー光で光解離させることによりO_2反応をスタートさせ、a_3ヘムに結合するO_2に4個の電伝達していった各段階における共鳴ラマンスペクトルを測定した。酸素同位体でシフるバンドを調べ、Fe^<III>-O^-_2→Fe^<III>-O-O-Cu^<II>→Fe^<IV>=O→Fe^<III>-OHと変化していくことを初めて確立し、本酵素の60年間に及ぶ研究の歴史にブクスルーを作った。ミオグロビンの分子構造はdeoxy型もoxy型も1.5Å分解能のX線結晶解析で明らかにされているが、そのいづれにおいてもO_2が蛋白の外側からヘム鉄に到達する道筋が存在しない。リガンドの脱着に伴う蛋白の速造変化をナノ秒のポンプ/プローブ時間分解ラマン分光法で追跡した。リガンドと一酸化炭素を用いた。COはサブピコ秒で光解離し、100ナノ秒からミリ秒にかけ結合する。再結合した分子のFe-co伸縮振動を観測するシステムを組立て、まずミオグロビンとその遠位ヒスチヂン変異体6種について上記の測定をした。続いてクミオグロビンの人工変異体についても数種測定し、静的なFe-co伸縮振動数が〜0cm^<-1>のものの再結合が〜510cm^<-1>のものより速いことを見つけた。しかし再結合途中で、いわゆるオープン形に対応するバンドはされなかった。この結果の解決のため、蛋白質の分子動力学計算をする一方で、非経分子軌道計算をも実施した。
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