本研究はアフィニティラテックスの質を高め、その対象を広げることを目的としている。今年度は系の拡張と各々の機能の向上に関する研究を行った。遺伝子転写における種々の因子を単離するために、転写因子間のアフィニティを利用した相補転写因子固定粒子の作製と評価を行い、優れた分離能を有することを認めた。また、RNA分離精製に適したDNA固定粒子と、ホルモンセレプター分離精製用のホルモン固定粒子についての考察と検討を行い、いずれの系においてもアフィニティラテックスはバイオセパレーターとして有望であることが認められた。これらの系について機能の発現と粒子の構造との関係に注目し、グリシジル基をシェル層に持つコアシェル粒子において構造制御と、その構造がアフィニティ特性に及ぼす影響、およびスペーサー効果について検討を行った。さらに、細胞接着性ペプチドArg-Gly-Asp-Ser(RGDS)固定粒子においても機能発現に及ぼす相対粒子の影響について詳細に検討を行った。その結果、生体特異的反応を行わせるに当たっては、それを取りまく環境(粒子の界面特性)が大きな影響を与える場合があることが明らかとなった。また、RGDS固定粒子についてはバイオアクチベーターとしての機能発現の機構の研究に進み、細胞膜レセプターを介した生体特異的活性化であることを確認し、その活性化の制御と活性化の指標となる新しい評価方法の考案の段階に移った。生体成分の選択的化学固定については、その制御がある反応条件で可能であることを確かめた。このように現在、生体特異的相互作用をアフィニティラテックスに適用できるプリンシプルと各系の個性を明かにしつつある。
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