オーストラリア西岸沖からのピストンコアRS96GC21とRC9-150について、ガラスビーズ法を用いて石灰質ナノ化石の含有量変化を明らかにした.石灰質ナノ化石の含有量は、両方のコアで酸素同位体ステージ6に著しく低下し、氷期における降下風成塵の増加を裏付けたが、風成塵降下域は、従来考えられていたより広範囲に渡ることが判明した。また、このナノ化石減少は、北西岸沖のコアRS96GC21では最終氷期のステージ2でも同じ傾向であったが、南方のコアRC9-150では明確な傾向が見られず、再堆積作用でシグナルが乱されたものと考えられる。オーストラリア南岸沖で採取されたピストンコアV18-222については、検鏡を開始し、氷期と間氷河期の石灰質ナノ化石群集変化を解明しつつある。 昨年度行ったODP716地点での研究成果のうち、下部透光帯の3種が揃って化石化され、氷期に同調して10万年サイクルで急増する事実については、昨年4月に英国Wales大学で開かれた“The 1st ODP and Marine Biosphere International Conference"で報告し、現在Proceedingとして印刷中である。また、上昇流卓越を示すと考える小型プラコリスの間氷期における急増を踏まえ、アジアモンスーンと氷期-間氷期サイクルの関係を考察した研究成果を、昨年9月の日本地質学会学術大会で報告したが、これを国際誌に投稿すべく準備中である。熱帯インド洋でのこれらの研究成果を踏まえた、オーストラリア西岸沖での研究成果についても、国際誌Paleo.Paleo.Paleoの特別号に投稿する準備を進めている。このように、過去2年間の研究成果は着実に論文として纏まりつつあるので、平成6年度の研究は極めて順調に推移していると考えている。
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