研究概要 |
平成5年度に行なった、愛媛県東宇和郡田穂上組に分布する田穂石灰岩の掘削(深さ50m、径7cm)のコアについて、コノドント化石の抽出、岩石薄片の観察、岩石分析を試みた。その結果、地表下22.80mから23.45mの間の暗灰色塊状、トロマイト質石灰岩から、三畳紀最前期グリースバッキアンを指示するコノドント、Hindeodus minutus,H.parvus. ?Isarcicella isarcica を得た。23.45mから下位には、整合的に灰白色塊状、ドロマイト質石灰岩あるいはドロストンが続き、23.50m付近から二畳紀を示す紡錘虫、Staffella sp. を見出だした。今回、田穂石灰岩を三畳系の田穂層、二畳系の城川層に二分することとした。 宮崎県西臼杵郡高千穂町塩井、宇層に分布する、上部二畳系(三田井層)、三畳系(上村層)の境界部を精査し、古生物学、岩石学的研究を行なった。その結果、上村層の最下部約3mの暗灰色塊状石灰岩から、グリースバッキアンを示すHindeodus minutus,H.parvus. Isarcicella isarcica, Neogondolella carinataの産出を確認した。上村層の基底と三田井層最上部のドロストンとの境界は整合的であり、ドロストンの下位に続く石灰岩からStaffella sp.が産出することを見出した。 以上のように、三畳系の田穂層ならびに上村層の最下部はグリースバッキアンであることが判明した。グリースバッキアンの暗灰色石灰岩は小型巻貝を含むミクライトで、遊離炭素を多く含み、その堆積の場が潟あるいは湾のような静穏で、還元的であったことが予想される。上部二畳系城川層あるいは上村層の灰色石灰岩は、石灰藻、有孔虫を含むミクライトで、堆積の場は静穏であるが、酸化的であったと見なされる。ドロマイト化は、後期二畳紀から前期三畳紀の間に生じたと考えられる。18FA01:二畳紀-三畳紀境界
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