1.小型のオオヒシガイFragum sp.cf.mundumについての生態学的研究 リーフエッジの厚さ1cm程度のアルガルマット中に生息し、堆積物中に内生する他のオオヒシガイと、表生のリュウキュウアオイガイの中間的な生態を示す。また、リュウキュウアオイガイ同様の透明窓を殻に持ち、オオヒシガイとリュウキュウアオイガイ属との系統関係を知る上で重要な位置を占めることが判った。 2.共生藻のperidini-chlorolphyll蛋白のアミノ酸配列 宿主を異にする共生渦鞭毛藻がそれぞれに宿主特異性をもつのか、宿主互換性があるのかを明らかにする目的で光合成系の光補足蛋白peridinin-chlorophyll蛋白(以下、PCP)の異同を1)蛋白の分子量、2)アミノ酸配列の2点から調べた。その結果共生性の渦鞭毛藻と非共生性の渦鞭毛藻のPCPとでは、その分子量および結合するペリディニン分子の数に差が認められた。 3.共生藻のチッソ代謝活性 暗条件でチッソ化合物を与え60分incubateし、消費量を測定した。その結果、渦鞭毛藻は硝酸態のチッソ利用、アンモニア態のチッソ利用することが判った。また亜硝酸の還元が暗所ではほとんど進行せず、光依存性であることは注目に値する。この結果は、サンゴおよび二枚貝に共生している状態の共生藻は宿主由来のアンモニア態のチッソをその生育の必要なN源としていることを示唆している。 4.オオヒシガイの光照射方向による光合成活性の差異 オオヒシガイの全体および半片について照射方向による酸素発生速度を比較した。その結果貝は入水孔からの光を受けるときにもっとも小さなKi値を示し、入水孔側からの光をよく利用することがわかった。貝殻を通過して散乱する光が外套膜中の共生藻に利用可能であることも判ったが、そのKiは大きく、光強度の低い条件では光利用の効率は高くないと思われる。
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