研究概要 |
我々は3年間の研究で、以下のような結論を得た。この内容は、Origin of algal-bivalve symbiosisという表題でPalaeontology誌に出版することができた。 1)二枚貝と渦鞭毛藻の共生関係の起源についての仮説の提唱。 この研究の発端となったのは,本来堆積物に潜って暮らす二枚貝と光を必要とする渦鞭毛藻がどのようにして共生関係を樹立する事ができたのかという,二枚貝の光共生の起源に関わる疑問であった。従来は,二枚貝が何らかの理由で表生生活を行うようになったり,軟体部を露出させるようになり,その後に渦鞭毛藻が共生したという、二枚貝の前適応に重点をおいた説が流布していた。我々は、オオヒシガイ(F.fragum)と共生する渦鞭毛藻は、非常に弱い光で光合成を行う能力があることを明らかにし、オオヒシガイ属においては、暗所適応した渦鞭毛藻と普通の内生生活を行う二枚貝とが共生関係を樹立したとの仮説を得るに至った。我々の仮説は、二枚貝の前適応を必要としないこと、またサンゴと共生する渦鞭毛藻をはじめとして暗所適応した渦鞭毛藻は普遍的に存在していることなどから、従来の説よりも簡単に共生現象の始まりを説明できるという利点をもつ。 2)二枚貝と渦鞭毛藻の共生関係の新しい事例の発見。 F.loochooanumにおいてした。 3)化石における二枚貝と藻類の共生関係推定基準の提唱。 オオヒシガイには渦鞭毛藻との光共生に関連して、殻形態にallometryがみられたり、また殻の構造に特殊化がみられる。このような特徴をもとに化石における二枚貝と藻類との共生関係の推定がより確実に行えることを提唱した。
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