研究概要 |
植物の地理分布動態モデルと,地球環境変化に対応した森林帯分布の変化シミュレーションの結果を論文発表した(Kohyama&Shigesada,1995).そこでまとめた緯度的な一次元分布モデルを,より詳細なスケールの二次元空間分布モデルに拡張する方法について,さらに検討を加えた. 植物群集の多種共存が,植物による光資源の空間分布形成によってもたらされることを証明した「森林構造仮説」に基づき,サイズ構造モデルのパラメータ分析を進めた.サイズ構造を持つ植物集団では,最大サイズと繁殖効率のあいだのトレードオフによって共存が可能になる.多種系について,このトレードオフに束縛される種のパッキングの様式を,4種系までについて具体的に分析することによって解明した.また,実際に得られた自然林多種系のデータがこのトレードオフを満足する傾向を示すことを確認した. 種間の共存領域は,個体サイズの成長速度の増大に伴って拡大するが,死亡速度や平均的なギャップ回転速度の増大に伴って減少することを認めた.「速い回転速度が多様性に促進的に働く」という説明は,動的平衡系における回転速度に関しては間違っていることがわかった(Kohyama、in press). さらに,おなじモデルによる分析から,(1)進化が必ずモデル系のストックを増大させる方向に生じ,(2)これに伴って排他的に優占する変異種が,あらたにより広い潜在的な共存領域を定義することをみいだした.これは,進化に伴う,生態系機能と生物多様性の非可逆的な増大を示唆する.生態系機能と生物多様性のカップリングを不変モデルとするために,栄養段階をまたがる生態系理論分析を現在進めている.
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