研究課題/領域番号 |
05454011
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研究機関 | 国立環境研究所 |
研究代表者 |
椿 宜高 国立環境研究所, 地球環境研究グループ, 総合研究官 (30108641)
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研究分担者 |
富山 清升 地球環境研究グループ, 科学技術庁特別研究員
永田 尚志 国立環境研究所, 地球環境研究グループ, 主任研究員 (00202226)
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キーワード | 野生動物 / 遺伝的多様性 / 左右対称性 / 自然選択 / 性選択 / 野生生物保全 / 個体群 |
研究概要 |
初年度は左右対称性のゆらぎ(Flictuating Asymmetry,FA)に関するこれまでの諸外国における文献を集めて整理し、総説を書いた。野性のメダカを採集し、これを室内で累代飼育する系を確立した。また、越冬後のメダカおよび6〜7月に生まれたメダカについて、ムナビレの計測を行なった。その結果、越冬後のメダカは当歳のメダカに比べてFAが小さいことがわかった。これはFAの大きな固体は死亡率が高いことを示唆しており、FAに対する強い自然選択が働いていることが考えられる。そこで、FAの遺伝率を測定すべく、室内実験を開始した。カワトンボについては採集個体の翅長を測定し、個体群の約20%の個体が左右の翅長に0.5mm以上の狂いがあることがわかった。ウグイス類について羽や足の左右対称性を測定した結果、かなりの個体が左右非対称であることがわかった。捕獲時に採血も行ない、遺伝子分析のための試料を蓄積しつつある。遺伝子分析を行なうためにアイソザイム(電気泳動法)、DNA指紋法を用いるが、そのためのセットアップを行ない、主に貝類を用いて分析を開始した。 FAはこれまで、発生学や遺伝学の限られた分野で注目されてきた形質であるが、野生動物の適応度指標として利用できる可能性がでてきた。上記のメダカ個体群の観測では、FAが弱有害遺伝子の蓄積程度を表現しており、自然選択は有害遺伝子を除去する働きがあることを示唆している。さらに、有害遺伝子は性淘汰(精子競争と配偶者選択)によっても除去される可能性があり、FAを指標とた性淘汰の測定が今後重要な課題の一つとなる。
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