研究概要 |
淡水産種(Vaucheria terrestris以下VTと略記する)と汽水産種V.dichotoma(同,VD)の2種の多核細胞性黄藻フシナシミドロを用いて,光屈性と細胞直径の制御が膨圧調節能と緊密に関連していることを発見した.VTは20mM以上のNaCl,あるいは等張のSorbitolにより負光屈性を示す.VDではSoribitolは負光屈性が起こすがNaClは正光屈性しか起こさない. そこで両種の膨圧調節能を比較解析するため,カチオン用とアニオン用のカラム,及び検出器を同一恒温槽に納め,流路を切り替えて陰陽イオンの分析をする改良型イオンクロマトグラフを製作した. 以下,5mMCaを添加しての実験結果を纏める.VTは青色光下ではNa^+とCl^-イオンを吸収して膨圧を保った.Na^+の吸収はK^+より多い.外液がSorbitolのときは,Na^+がないので膨圧を回復できない.白色光下(12時間明/12時間暗)でVTは顕著な膨圧調節能を示さない.一方,VDは顕著な膨圧調節能を示す.K^+,Na^+,Cl^-,SO_4^<2->を活発に吸収するが,K^+をやや多く吸収する.膨圧は300mOsm以上で低下するが400mOsmでも存在する.これらのことから,VDにおいて,Sorbitolでは膨圧が保てないためSoribitolを用いたときだけ負光屈性が現れたと考えられる.VTは,膨圧調節能がないか低いので,SorbitolでもNaClでも膨圧を回復できず,これが負光屈性の原因であろう.膨圧低下がどのような過程を経て負光屈性を起こすか,また,細胞直径の減少がどのように膨圧減少に関連しているかは今後の研究に待たなければならない.
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