クラウンゴール腫瘍形成におけるアグロバクテリウムと植物の分子的相互作用

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454017
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 町田 泰則 名古屋大学, 理学部, 教授 (80175596)
• 研究分担者: 吉岡 泰 名古屋大学, 理学部, 助手 (60202397)
• キーワード: アグロバクテリウム / Tiプラスミド / プロテインキナーゼ / vir遺伝子発現 / フェノール / 単糖

研究概要

TiプラスミドによるDNAの導入は、Agrobacteriumが植物に感染した際に誘導される多段階の反応により引き起こされる。その内の最も重要な素過程の一つは感染時に誘導されるAgrobacteriumのvir遺伝子の発現であり、その遺伝子産物の働きによりDNAが植物細胞へ転移する。本研究の目的は、このTiプラスミドによるDNA導入の素過程の分子機構を理解する必要がある。本研究では、DNA転移の鍵となる反応であるvir遺伝子の発現は植物からのフェノール物質と単糖による協調的作用により誘導されることを明らかにした。さらに、フェノール物質はAgrobacteriumの膜結合型プロテインキナーゼであるVirAタンパク質に作用するが、単糖はペリプラズムに存在するChvEタンパク質に結合し、糖結合型ChvEタンパク質がVirAタンパク質に作用し、フェノール物質によるシグナルを増幅することを明らかにした。これらの結果は、これらのシグナル物質の量と割合を考慮することによりTiプラスミドによる遺伝子導入効率を改良することがでりる可能性も示している。また、Agrobacteriumから植物細胞への遺伝子の転移そのものにはVirBタンパク質群、VirD2、VirD4タンパク質が必須であり、VirE2タンパク質には転移を促進する機能があることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Yasunori Machida: "Molecular interactions between Agrobacterium and Plant cells" the symposium book of 6th ISMP(ed.by E.W.Nester)Kluwer. 85-96 (1993)
• [文献書誌] Yasushi Yoshioka: "Mechanisms of T-DNA transfer and integration into plant chromosomes:role of virB,virD4 and virE2 and a short interspersed repetitive element(SINE)from tobacco" Molecular Mechanisms of Bacterial Virulence. (in press). (1994)
• [文献書誌] Yasushi Yoshioka: "Molecular characterization of a short interspersed repetitive element form tobacco that exhibits sequence homology to specific tRNAs" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 90. 6562-6566 (1993)
• [文献書誌] Nobuyoshi Shimoda: "Genetic Evidence for an Interaction between the VirA Sensor Protein and the ChvE Sugar-binding Protein of Agrobacterium" The Journal of Biological Chemistry. 268. 26552-26558 (1993)
• [文献書誌] Toshiya Muranaka: "A model for a bioconversion system with the promoter of the parAt gene,which confers a high level of expression of a transgene in hairy roots" Applied Microbiology Biotechnology. (in press). (1994)