生殖機能発現における関連ホルモン受容体の比較内分泌学的研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454021
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 川島 誠一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20011554)
• 研究分担者: 岡 良隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70143360) ; 朴 民根 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00228694) ; 守 隆夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80011659)
• キーワード: ペプチドホルモン受容体 / cDNAクローニング / RT-PCR反応 / 転写制御 / in situ hybridization / 視床下部 / 下垂体 / 比較内分泌学

研究概要

生殖機能に重要な役割を演じているホルモン受容体タンパク質の発現調節を解明することを目的として、2年間の研究計画を開始した。対象は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、ゴナドトロピン、プロラクチンなどの受容体である。実験動物としてラットとマウスを主に用いるが、比較内分泌学的検討のためにはニワトリ、ウズラ、ヘビ、イモリ、魚類も加えた。本年度得られた成果を列記する。
(1)ゴナドトロピン受容体の細胞膜外領域のホルモン結合部位をRT-PCR反応により増幅し、クローニングのためのプローブとした。その結果、哺乳類以外(ウズラ)ではじめてLH受容体cDNAが得られ、519塩基対の配列を決めた。各種動物(ラット、マウス、ウズラ、ヘビ、イモリ、ドワーフグーラミ)でLH受容体cRNAに対する反応性を調べ、鳥類と哺乳類で陽性反応を得た。(投稿中)
(2)GnRH受容体cDNAのクローニングを行い、全長1317塩基対の全翻訳領域を含むクローンを得た。われわれのクローンは5'-上流側の配列が従来の報告のものと異なり、異なった転写制御を受ける別のmRNA由来であることが考えられる。(論文公表済)これをプローブとして、種々の生理条件のもとで下垂体における発現をin situ hybridizationなどで調べ、発現量が血液中のステロイドホルモン濃度によって変化することを確かめた。(投稿中)
(3)精巣のFSH受容体・LH受容体が、光環境や動物の系統の違いによって差異の生じることを、フィンチとマウスで実験し、2編の論文として公表した。
(4)間脳視床下部細胞の無血清培養での性ステロイドの作用、およびプロラクチン受容体の子宮での発現についても新知見を得た。(論文公表済)

研究成果

• [文献書誌] Kawashima,S.,et al.: "Photoperiodic regulation of follicle-stimulating hormone binding to gonads and of plasma gonadotropin concentrations in------." General and Comparative Endocrinology. 92. 250-259 (1993)
• [文献書誌] Kudo,A.,et al.: "Isolation of rat GnRH receptor cDNA having different 5′-noncoding sequence." Zoological Science. 10. 863-876 (1993)
• [文献書誌] Takagi,K.,et al.: "Culture of rat brain preoptic area neurons:effects of sex steroids." International Journal of Developmental Neurosci.11. 63-70 (1993)
• [文献書誌] Singtripop,T.,et al.: "Prolactin binding sites in normal uterus and the uterus with adenomyosis in mice." Zoological Science. 10. 353-360 (1993)
• [文献書誌] Ohta,N.,et al.: "Hormonal modulation of prolyl endopeptidase and dipeptidyl peptidase IV activities in the mouse uterus and ovary." Acta Endocrinologica. 127. 262-266 (1993)
• [文献書誌] Shiraishi,K.,et al.: "Developmental changes of testicular gonadotropin receptors and serum gonadotropin levels in two strains of mice." Zoological Science. 10. 497-504 (1993)