1.活性型ホロスポラ特異的物質 ゾウリムシの大核内共生細菌の感染型ホロスポラオブツサは、食胞を経由して宿主細胞質に入り、大核に感染するが、大核に感染する前に形態と比重を変化させる。この細菌は活性型と呼ぶ。活性型ホロスポラに起こる物質の変化を調べるために、単離した活性型を抗原にして活性型特異的モノクローナル抗体(AF-1-1)を取った。間接蛍光抗体法では、抗原は活性型にのみ認められ、増殖型と感染型には認められなかった。イムノブロットでは、分子量58.5Kと22.9Kの活性型特異的バンドが出現した。さらに、この抗原は、感染型をin vitroで低pH処理しても誘導できた。つまり、食胞での低pH条件がAF-1-1抗原発現の引き金であると考えられる。この物質が、感染過程でのホロスポラの食胞脱出、大核への移動、大核と小核の識別、大核膜貫通のどの段階に機能しているかはまだわからない。 ホロスポラが宿主の生存に貢献している証拠 増殖型を持つゾウリムシと、感染型を持つゾウリムシ、オブツサを持たないゾウリムシ(対照実験)を4度、25度、35度の条件に48時間おき、生存率を調べた。25度では、3者の生存率に差が見られなかった。4度と35度では、増殖型を持つゾウリムシの生存率が最も高く、感染型を持つゾウリムシは逆に対照実験より生存率が低かった。ホロスポラが発見されて以来、105年目にして、ホロスポラとゾウリムシの関係は、温度条件によっては片利共生ではなく相利共生であることが判明した。どのようにして、宿主の生存率を変化させるかはまだ分からない。
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