1.ホロスポラの感染過程での宿主食胞脱出には、食胞内pHの酸性化を必要とし、食胞内の酸性pHは感染型ホロスポラを活性型に分化させる 感染型ホロスポラオブツサは、宿主食胞のDV-Iからのみ細胞質に脱出して宿主核に感染する。酸性vacuoleのpH低下の機能を持つV-ATPase(液胞型プロトンポンプ)の阻害剤のコンカナマイシンAとBは、食胞内pHの酸性化阻害とオブツサの食胞脱出阻害を誘導した。さらに、クロマフィン顆粒のプロトンポンプに対するモノクローナル抗体を使った間接蛍光抗体法は、DV-I膜に抗原が存在することを明らかにした。以上の結果は、DV-Iの酸性化がホロスポラの食胞脱出の引き金になっていることを示している。さらに、感染型オブツサをin vitroでpH3で処理すると短時間で、in vivoでの感染過程で出現する活性型の形態変化が誘導され、活性型特異的モノクローナル抗体(AF-1)の抗原が、転写と翻訳を伴って出現することが明らかになった。 2.ホロスポラの細胞壁物質の菌体外分泌は宿主核膜の物質透過性を低下させる オブツサの細胞壁に対するモノクローナル抗体を得た。この抗体を使って、ホロスポラ保持ゾウリムシを間接蛍光抗体法で染色すると、増殖型のみが存在する大核内の増殖型は染色されるが、感染型を持つ大核内の感染型はたとえゾウリムシを固定・イクストラクトしても染色できない。この原因は、抗体が大核膜を通過できないほど多量の細胞壁物質が大核膜に厚く沈着するためである。増殖型が感染型に分化する時に、細胞壁物質が必要以上に合成され、余分が菌体から放出されて大核膜に沈着し、核膜の物質透過を阻害し宿主の生存率を低下させて感染型が外液に出る機会を増加させる効果を生んでいると思われる。感染型を持つ宿主の増殖と生存率低下の原因が初めて明らかになった。
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