研究概要 |
1.ホロスポラは低温条件下では宿主の生存率を高める:4℃では、増殖型ホロスポラオブツサ保持細胞の方が、オブツサを持たない細胞より生存率が高く、ホロスポラが宿主の役に立っていることが初めて証明された。これが、気温の低い地域でのみホロスポラがゾウリムシに維持されている原因と思われる。 2.ホロスポラのgroELホモログはヒートショックで量が増加するヒートショックタンパク質である 3.ホロスポラの感染型特異的抗原:ホロスポラの感染型特異的モノクローナル抗体を3種取った。抗体IF-3-1とIF-3-2は、ペリプラズム特異的な抗原を認識することが免疫電顕で明らかになった。MI-1抗原は感染型分化過程初期に出現した。 4.宿主食胞内pHの酸性化は、ホロスポラの食胞脱出と活性型特異的タンパク質の遺伝子発現に必須:V-ATPaseの阻害剤のコンカナマイシンは、食胞内pHの酸性化阻害とホロスポラの食胞脱出阻害を誘導した。一方、感染型ホロスポラをpH3で短時間処理すると、転写を伴った活性型特異的抗原の出現と活性型特異的形態変化が誘導された。 5.ホロスポラの抗プロトンポンプ抗体は、宿主収縮胞および各種生物のミトコンドリアのプロトンポンプと交差反応する:ホロスポラの抗プロトンポンプ抗体IR-2-1は、大腸菌とは反応しないが、縮主収縮胞のdecorated spongiomeと各種生物のミトコンドリアのプロトンポンプと交差反応し、バクテリアのプロトンポンプ、真核生物のF-ATPase, P-ATPaseに共通の抗原決定基を認識する抗体であることが示唆された。 6.ホロスポラの細胞壁物質は宿主核膜の物質透過性を低下させる:ホロスポラオブツサの抗細胞壁抗体は、増殖型のみが存在する大核膜は通過できるが、感染型を持つ大核膜を通過できない。増殖型が感染型に分化する時に、細胞壁物質が必要以上に大量合成されて菌体外に放出され、これが大核膜に厚く沈着して物質通過を妨害していることが分かった。ホロスポラは、感染型になると宿主の生存率を積極的に低下させ、宿主外に脱出する機会を高めていると考えられる。 7.ホロスポラレクタの単離と凍結保存が可能になった:単離した感染型レクタは-85℃て少なくても127日間、感染能力と増殖能力を維持した状態で保存可能となった。
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