研究概要 |
日本産モグラのうち、アズマモグラに関しては本州、四国の27箇所において採集された260個体、サドモグラは本州と佐渡の2箇所の41個体、コウベモグラに関しては本州、四国、九州の23箇所の標本280個体、合計581個体の標本を使用して形態の地理的変異および分子進化学的分析をおこなった。各採集地の環境要素として生息地面積(好適生息地を水田面積で代表)の測定、土壌硬度測定、土壌サンプル採集を行い、気象データに関しては最寄りの気象台データあるいはアメダスデータを使用した。採集したモグラは現地にて標本作成、あわせて肝臓、筋肉組織などの組織標本を採集した。その後、研究室にて頭骨標本を作成し、そのサイズの地理的変異と環境の諸要素との関係について重回帰分析等の解析を行った。一方、組織標本から所定の方法によりmtDNAを抽出し、塩基配列決定後,その変異からモグラの地域個体群間の関係、種間の関係等について解析を行った。その結果、どのモグラでも体サイズの地理的変異が生息地面積とは正の相関を示したが、気温や降雨量との関係は種によって異なった反応が見られた。すなわち、コウベモグラのサイズは平均最低気温とは負の、アズマモグラでは年平均気温と正の相関と正の相関がみられた。また、土壌硬度は体サイズの変異に関係しないことがわかった。mtDNAの塩基配列の分析結果および合わせて一部のサンプルで行ったアイソザイムの変異(12種類,20遺伝子座)研究の結果は,日本のモグラ類のこれまでの分類(Abe,1967)が基本的に正しいこと、種内では幾つかの地域個体群間に変異があることが明らかになった。
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