研究概要 |
電気透析によって発酵液から有機酸が回収される現象について,電気動力学的立場から解析を加え(論文1,論文2),酢酸イオンの流速におよぼす透析室内液流速,pH,酢酸濃度などの影響を実験で調べ,その結果を定式化した.また,有機酸と共にリン酸が除去される現象についても,同様の考察を行った(論文3). Propionibacterium shermaniiの1株を用いて電気透析培養を行い,プロピオン酸と酢酸の生産経過を測定し,電気透析を行わない培養法の結果と比較した(論文4).菌の増殖速度,生酸速度共に,約30〜40%向上が認められた.電気透析と発酵の両操作を最適に近い条件で行うために,透析希釈液の分流循環法が有効であることを示した. 醗酵液から生産阻害性の有機酸を電気透析で分離することによって,菌体,アルコール,加水分解酵素など有機酸以外の有用物質の生産速度を向上させる目的で,実験系に適した嫌気性細菌の選択を試みた.Clostridium thermocopriaeをセルロース培地を用いて培養し,エタノール,酢酸,酪酸が最終濃度でそれぞれ1.2,3.2,0.4(g/l)生産されることを認めた.しかし,厳密な嫌気性を要求する本菌は,電気透析培養に向かないと判断されたので,酸素耐性のClostridium tertiumを入手しグルコースを炭素源にして培養を行いエタノール3.1g/l,酢酸5.2g/l,プロピオン酸1.5g/l,酪酸4.95g/lを生成することを認め,発酵終了液中にでんぷん,ラクトースなどの分解酵素活性の存在を確認した.
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