研究概要 |
嫌気性細菌の醗酵液から阻害性生産物質の有機酸を電気透析で分離することにより,菌体,有機酸,アルコール,酵素などの生産速度をどこまで向上できるかについて評価を行った。 4室型電気透析モジュールをジャーファーメンタに接続して電気透析培養装置を構成し,当研究室保存のセルラーゼ生産菌 Clostridium thermocopriae および酸素耐性の Clostridium tertium の培養を行った.Clostridium thermocopriaeは、増殖速度が遅く培養に長時間を要するのと、手持ちの電気透析モジュールでは完全な無酸素状態に維することができないため絶対嫌気性の本菌の培養が困難であった.そこで,酸素耐性のあるClostridium tertium IAM14196を用いることとした.酢酸,乳酸,酪酸,エタノールなどの発酵生産物の生成速度に対する電気透析の効果について検討を加えた.電気透析でpHを6.2に制御した場合と,1ON NaOH溶液を添加してpHを6.2に制御した場合の比較を行った.消費グルコース当たりの発酵生産物の収率は、電気透析培養法の方が,酢酸で2〜3倍,酪酸で3〜4倍大きかった.一方,乳酸とエタノールの収率は,アルカリ添加によるpH制御培養法の方が,それぞれ1.5倍、4倍であった.醗酵生産物の生成比が電気透析培養と非電気透析培養で醗酵生産物の生成比が異なることは,醗酵の代謝経路が変化したことを示唆する.目的の生産物の収率を高める方法の一つとして電気透析培養法の採用が有効であることが明らかになった.本菌はでんぷん,乳糖を炭素源として利用するので,アミラーゼ,ガラクトシダーゼの生産を期待したが,酵素活性がきわめて低いため,その生産に対する電気透析の効果は明らかにすることができなかった.
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